- 「法律事務所を立ち上げるメリット・デメリットを知りたい」
- 「独立してから開業するまでの流れをあらかじめ把握しておきたい」
ある程度経験を積んだ弁護士であれば、法律事務所の独立開業も視野に入ってくるはずです。
しかし、うまく経営できるかどうか不安に感じ、一歩踏み出せていない方もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、法律事務所の経営を成功させる方法をわかりやすく解説します。
独立開業のメリット・デメリットや集客のポイントなども紹介するので、ぜひ最後までチェックしてみてください。
目次
弁護士が独立開業して経営を始めるメリット・デメリット
まずは、弁護士が独立開業して経営を始めるメリット・デメリットを解説します。
メリット・デメリットの双方を正しく理解したうえで、独立開業に踏み切るかどうかを慎重に判断しましょう。
メリット|業務スタイルや事件内容などを自由に選べる
弁護士が独立開業して経営を始める主なメリットは、業務スタイルや事件内容などを自由に選べることです。
具体的には、以下のような点をご自身の裁量で決められます。
- 事務所の場所
- 営業日・営業時間
- 受注する法律分野
- 事件処理の方針
経営者になれば、全ての決定権は自分自身にあります。
上司もいないので、理不尽な判断に嫌々従う必要もありません。
ご自身が理想とする法律事務所のかたちを、自由に作り上げることが可能です。
また、固定給で働く立場ではなくなるので、基本的には働けば働くほど収入が増えていきます。
経営状況にもよりますが、独立してから収入が大幅にアップするケースも珍しくありません。
デメリット|初期費用が必要で売上確保に時間がかかる
弁護士が独立開業して経営を始めるデメリットは、初期費用が必要で売上確保に時間がかかることでしょう。
具体的には、独立開業後に以下のような事態に陥ってしまう可能性があります。
- 一時的に借金を背負うことになる
- 事務所の経費が負担になる
- 収入が不安定になる
- 営業活動に時間と労力がかかる
また、気軽に相談できる仲間が近くにいなくなることもデメリットといえます。
経営や事件処理に関する問題をひとりで抱え込むことになるので、精神的な負担も大きくなるでしょう。
複数人で開業する場合は価値観の違いや金銭トラブルが原因となり、経営を続けられなくなるケースがあるので注意してください。
弁護士が法律事務所を開業して経営を始めるまでの流れ
次に、弁護士が法律事務所を開業して経営を始めるまでの流れを解説します。
おおまかな流れだけでも理解できていれば、開業後の不安も軽減されるので参考にしてみてください。
1.開業資金を準備する
法律事務所を開業するためには、まず資金を準備することから始めなければなりません。
弁護士が独立する場合は、以下のような費用がかかります。
- 事務所のテナント物件を借りる際の保証金や仲介手数料など
- 事務所の内装工事
- 事務機器の手配
- 事務員の採用
- ホームページの制作
数百万円以上の費用を要するケースが一般的であり、基本的にはローンを組むことになるでしょう。
借入れをおこなう際は、日弁連や各弁護士協同組合などから支援を受けられる場合もあるので有効に活用してください。
借金を避けたい場合は、自宅を事務所として開業するのも選択肢のひとつです。
パソコンや電話さえあれば、最低限の設備は整います。
そのほか、共同事務所を利用したり、依頼者との打ち合わせのときだけレンタルオフィスを借りたりするのもよいでしょう。
2.テナントを確保する
新たに事務所を設置する場合は、テナントを確保する必要があります。
テナントを探す際は、以下の点を確認しておくようにしましょう。
- 裁判所・郵便局へのアクセスはよいか
- 見つけやすい場所にあるか
- 駐車スペースはあるか
- 事業用か住居用か
事件を処理する中で、裁判所や郵便局に足を運ぶ機会は数多くあるため、できるだけアクセスのよい場所を選びましょう。
また、人目に触れにくい場所や、車が止められないような場所は敬遠されることが多いので注意してください。
ただし、立地がよい場所には競合が集まりやすいデメリットもあります。
公共交通機関が充実した地域であれば交通の便を過度に気にする必要もないので、開業地域の実態にあわせて臨機応変に判断しましょう。
事業用と住居用のどちらの物件を利用するかも、開業時の重要なポイントです。
事業用物件は使い勝手がよく、依頼者からの信頼も得やすい反面、保証金が高い傾向にあります。
住居用物件であれば保証金を抑えられますが、レイアウトが限定されるなどのデメリットがある点に注意してください。
また、テナントを選ぶ際は必ず内見をおこない、顧客の視点で利便性などを確かめることが重要です。
3.事務用品を購入する
テナントが確保できたら、事務用品を揃えていかなければなりません。
具体的には、以下のような事務用品を購入する必要があります。
- 執務机・椅子
- 会議テーブル
- パーティション
- 収納庫
- コピー機・FAX
- 電話機
- パソコン
- シュレッダー
事務員を雇用する予定があれば、まとめて購入しておくのもよいでしょう。
資金に余裕がない場合は、中古品やリース品を積極的に活用することをおすすめします。
4.税務署に開業届を出す
開業準備が整ったら、税務署に開業届を提出してください。
基本的には、事業を始めてから1ヵ月以内に提出すれば問題ありません。
しかし、開業資金を借りたり、事務所名義の口座を作成したりする際に開業届の提示を求められる可能性もあるので、早めに提出しておくのもよいでしょう。
開業届の作成や提出は、e-Taxを利用しておこなうのがおすすめです。
専用ソフトで開業届を作成し、オンラインで提出できるので、税務署まで足を運ぶ必要がなくなります。
法律事務所の経営を安定させるための集客の3つのポイント
ここでは、法律事務所の経営を安定させるための集客のポイントを紹介します。
経営者になるうえで欠かせない知識なので、一つひとつのポイントをしっかりと押さえておきましょう。
1.民事法律扶助や国選弁護人制度の登録をする
法律事務所の経営を安定させたいのであれば、民事法律扶助や国選弁護人制度の登録をおこないましょう。
民事法律扶助業務は、経済的に余裕のない方が無料で弁護士に法律相談できる制度のことです。
法テラスと契約を結んでいれば、民事法律補助業務の一環として法律相談の仕事を紹介してもらえる可能性があります。
国選弁護人の仕事を希望する場合も、法テラスとの契約が必要です。
報酬はそこまで高額ではないものの、開業直後の貴重な収入源となるでしょう。
2.セミナーや異業種交流会などで人脈を広げる
集客を図るためには、セミナーや異業種交流会などで人脈を広げることも大切です。
開業直後で知名度のない法律事務所が、新規顧客を獲得するのは苦労するかもしれません。
人脈を広げておくことで、紹介によって仕事が舞い込んでくることもあります。
セミナーや異業種交流会、ロースクールの同窓会などには積極的に参加し、独立開業し、仕事を探していることをアピールしましょう。
3.ホームページやポータルサイトを活用する
ホームページやポータルサイトを活用し、集客に取り組むことも重要です。
弁護士を探している人の多くはインターネット検索を利用するため、現代においてWeb集客は必要不可欠といえます。
まず、事務所のホームページは優先的に開設しておくべきでしょう。
自分で開設すればサーバーのレンタル代程度で済むので、広告費用をかけずに集客が期待できます。
ただし、アクセスを増やすためには、検索結果に上位表示させるSEOの技術をある程度学んでおかなければなりません。
そのため、集客を急ぐ場合やSEO対策に自信がない場合などは、弁護士ポータルサイトの利用も検討してみてください。
ポータルサイトは、複数の法律事務所の情報が集約されているサイトのことです。
すでにSEO対策が施されているため、事務所の情報を掲載すればすぐに問い合わせがくることもあります。
なお、基本的には月数万円程度の掲載料がかかるので、掲載後には費用対効果を随時検証するようにしましょう。
効率よく集客をしたいなら「ベンナビ」を使うのがおすすめ!
効率よく集客したいなら、「ベンナビ」の利用をおすすめします。
ベンナビは、日本最大級の分野特化型弁護士ポータルサイトです。
相続・交通事故・離婚などの法律分野ごとにサイトが分かれているため、ご自身が得意としている分野に絞って集客することができます。
また、SEO対策やリスティング広告にも力を入れているため、高い集客効果が見込めるはずです。
独自のアルゴリズムにより、問い合わせ数の少ない事務所が優先表示されるため、毎月安定した問い合わせを獲得できる点もベンナビの特徴といえます。
利用料も月2万円からと比較的安価なので、ぜひ有効に活用してみてください。
法律事務所を成長させるのに役立つ3つの経営テクニック
ここでは、法律事務所を成長させるのに役立つ経営テクニックを紹介します。
主に経営戦略・組織マネジメント・マーケティングの3つが重要となるので、それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.経営戦略|事務所をどのように成長させていくかという方針のこと
独立開業した法律事務所を成長させるためには、経営戦略が必要になります。
経営戦略とは、事務所をどのように成長させていくかという方針のことです。
会社を経営するうえで利用できる人材・物・資金には限りがあるため、経営戦略に基づいて適切に選択・分配していかなければ持続的な成長は期待できません。
もちろん、とるべき経営戦略は個々の法律事務所によって異なるため、経営理念や市場のニーズなどを考慮しながら、何を強みとして成長させていきたいのかを検討するようにしましょう。
2.組織マネジメント|事務所の人員を適切に配置し管理する手法のこと
法律事務所の人員を拡大する際には、組織マネジメントを徹底するようにしましょう。
組織マネジメントとは、事務所の人員を適切に配置し管理する手法のことです。
個人で取り組める業務範囲には限界があり、さまざまな得意分野や経験をもつスタッフが協力し合うことで、はじめて提供できるサービスもあります。
そのため、スタッフを適材適所に配置し、それぞれをうまくつないであげることが経営者の大きな役割といえるでしょう。
組織マネジメントに取り組む際のポイントは、主に以下の4点です。
- どのような組織にしていきたいのかを明確にする
- 本音で対話できる職場環境をつくる
- 目指したい組織像をスタッフと共有する
- 必要に応じて経営者としての影響力を発揮する
さまざまな価値観や能力をもつスタッフを、動機づけて業務に巻き込んでいくことを意識してください。
個々のスタッフの意向も踏まえながら、それぞれに適したかかわり方を模索していくことが大切です。
3.マーケティング|自然とサービスが売れるようになる仕組みづくりのこと
競争が激化する弁護士業界を生き抜いていくためには、マーケティングの考え方も必要です。
マーケティングとは、自然とサービスが売れるようになる仕組みづくりのことです。
マーケティングの基本は「顧客のニーズに応えること」にあります。
顧客を満足させられるサービスを提供できれば、長期的な売り上げが期待できます。
たとえば、ホームページやSNS、メールマガジンなどによる宣伝もマーケティングのひとつです。
Webマーケティングと呼ばれる手法で、新聞やテレビでの宣伝よりも広告費を大幅に抑えられる点が特徴といえます。
そのほかマーケティング手法は多岐にわたるので、ターゲット層や予算などにあわせて適切に選択するようにしてください。
法律事務所の開業資金を準備するときに役立つ融資・制度3選
法律事務所を開業するためには、ある程度まとまった資金が必要になります。
ここでは、開業資金を準備するときに役立つ融資・制度を3つ紹介するので参考にしてみてください。
1.日弁連の新人弁護士等準備支援制度など
法律事務所の開業資金を準備する際は、日弁連の新人弁護士等準備支援制度などによる支援を受けられる可能性があります。
たとえば、弁護士が不足する偏在解消対策地区で独立開業する場合は、開業資金・運営資金として350万円を無利息で借入れることが可能です。
偏在解消対策地区には、以下のいずれかを満たす地域が該当します。
- 弁護士ひとりあたりの人口が3万人を超える地方裁判所支部管轄区域
- 法律事務所が2ヵ所以上存在しない簡易裁判所管轄区域
- 法律事務所が存在しない地区市町村
また、地方裁判所支部管轄区域内の法律事務所が3ヵ所以下の地域で、国選弁護・当番弁護・法律扶助のいずれかを受任する弁護士が1名以下の地域、またはこれに準ずる地域の場合は、無利息での貸付上限が650万円に増額されます。
さらに、そのうち300万円については、公益的事件を積極的に受任することで返済が免除されるケースもあります。
2.各弁護士協同組合による融資制度
開業資金の借入れが必要なときは、弁護士協同組合による融資制度の利用も検討してみましょう。
たとえば、神奈川県弁護士協同組合では、以下の融資制度が用意されています。
- 小口融資制度:100万円を上限に低金利・無担保で借入できる(借入期間は1~12ヵ月間)
- 弁護士特別融資制度:指定の金融機関から低金利で融資を受けられるようにあっせんしてもらえる
融資制度の内容は組合によって異なりますが、基本的には通常の銀行融資よりもお得に資金調達できます。
3.日本政策金融公庫の新規開業資金
日本政策金融公庫の新規開業資金を活用して、開業資金を調達するのもひとつの方法です。
特別利率で開業資金や運転資金を融資してもらえます。制度の詳細については、日本政策金融公庫の以下公式サイトで確認ください。
【参考】新規開業資金|日本政策金融公庫
弁護士の独立開業に関するよくある質問
最後に、弁護士の独立開業に関するよくある質問に回答します。
同様の疑問を抱えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
Q.一般的に何年目に独立する弁護士が多いのか?
一般的には、弁護士となってから5年前後で独立するケースが多くみられます。
「令和5年司法試験の採点結果」によると司法試験合格の平均年齢は、令和4年は28.3歳、令和5年は26.6歳でした。そのため弁護士が独立開業する目安は、30歳前半といったところです。
また日弁連の調査※によれば、独立開業する弁護士の数は全体の半数以上です。
ベテランになるほど独立志向が強まり、経験年数が10年を超える弁護士の8~9割は開業しています。
【参考】「2018 /【特集2】近年の弁護士の実勢について(弁護士実勢調査と事件動向調査を元に)」
Q.独立開業した弁護士の平均年収はどれくらいか?
独立開業した弁護士のみの年収を対象とした統計は見当たりませんが、一般的には1,000万円~1,500万円程度といわれています。
ただし独立開業したばかりで数百万円程度の年収にとどまる弁護士もいれば、年収1億円を超える弁護士も存在する点は注意が必要です。
独立開業してどのくらい収入を得られるかは、個人の実力や実績によって大きく異なります。また、独立開業した場合、運営費用や広告費などの経費がかかる点も忘れてはいけません。
さいごに|法律事務所の集客を増やしたいならベンナビを検討しよう
法律事務所を独立開業すれば、自由な働き方が手に入るうえ、今よりも年収を大幅に増やせる可能性もあります。
しかし、独立開業が成功するかどうかは、経営者としての手腕にかかっています。
案件の解決実績を積み上げていくことも大切ですが、経営に関する知識を身につけ、しっかりと集客につなげていかなければなりません。
集客の方法は多岐にわたるため、経営方針や予算規模に応じたものを選択することが大切です。
素早く低予算で案件を獲得したいのであれば、全国の弁護士を検索できるポータルサイト「ベンナビ」での集客を検討してみてください。
ベンナビは月間数百万人が訪れるポータルサイトなので、掲載直後から安定して問い合わせを獲得できる可能性があります。
また、月額2万円から利用できるため、開業後で資金に余裕がない場合でも無理なく始められるでしょう。