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弁護士が独立開業するための完全ガイド|流れやメリット、注意点などを徹底解説

公開日:2024/05/14
更新日:2024/07/01
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  • 「弁護士が独立開業する方法を知りたい」
  • 「独立開業を成功させるためのポイントを教えてほしい」

弁護士として経験を積み、独立開業を目指しているものの、何から手をつけてよいのかわからず、踏みとどまっている方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、独立開業を目指している弁護士に向けて以下の内容について説明します。

  • 弁護士が独立開業する際の流れ
  • 独立開業してからの経営・集客のコツ
  • 弁護士の独立開業をサポートしている窓口 など

本記事を参考に弁護士の独立開業のポイントを理解し、スムーズに自分の事務所を持てるようになりましょう。

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目次

弁護士の開業事情|年々法律事務所は増えている

日本弁護士連合会が発行している「弁護士白書 2023」によると、規模別の法律事務所の数は以下のように推移しています。

2021年2023年
1人事務所1万8411万2,299
2人事務所3,1493,159
3~5人事務所2,6552,632
6~10人事務所764798
11~20人事務所246261
21~30人事務所5760
31~50人事務所3940
51~100人事務所1016
101人以上事務所1111
合計1万7,7721万8,276

法律事務所の数は年々増え続けており、2023年には1万8,276事務所となっています。

増加した事務所のうち、ほとんどは1人事務所であるため、新たに独立開業している弁護士が多いと推察されます。

なお、新規の弁護士数も一貫して増加し続けているため、今後さらに法律事務所が増えると考えられるでしょう。

弁護士が独立開業をする3つのメリット

弁護士が独立開業する主なメリットには、以下の3点が挙げられます。

  • 年収を増やせる可能性がある
  • 働き方の自由度がアップする
  • 依頼も自由に選べるようになる

ここでは、弁護士が独立開業するメリットについて解説します。

1.年収を増やせる可能性がある

弁護士が独立開業すれば、年収を増やせる可能性があります。

事務所に所属する勤務弁護士の場合、事務所の売上に貢献したとしても、給料が大幅に増えることはほとんどありません

しかし、独立開業後は、基本的に働けば働くだけ収入を増やすことができます

得られる利益を全て自分のものにできることは、独立開業による大きな変化といえるでしょう。

2.働き方の自由度がアップする

働き方の自由度がアップする点も、独立開業のメリットに挙げられるでしょう。

独立開業後は自分自身が経営者となるため、働き方を誰かに決められることはなくなります。

休日・勤務時間・勤務場所などを、自身の経営方針やライフスタイルにあわせて設定することができます。

3.依頼も自由に選べるようになる

独立開業後は、どの依頼を受任するかを自分自身で選択できるようになります。

勤務弁護士の場合は、基本的に事務所から事件を割り当てられるため、担当する事件を選べないことが多いです。

しかし、独立開業後は得意分野やこれから力を入れていきたい分野に絞って依頼を受けられるようになります。

嫌な仕事を引き受けるストレスから解放されることも、独立開業する大きなメリットといえるでしょう。

弁護士が独立開業する際の大まかな流れ|3ステップ

独立開業するまでのステップには、大きく分けて以下の3つがあります。

  1. 事務所の場所や名称などを決める
  2. 所属弁護士会に開業の連絡をする
  3. 所轄の税務署に開業届を提出する

ここでは、弁護士が独立開業する際の大まかな流れを解説します。

1.事務所の場所や名称などを決める

まずは、事務所の場所や名称など、以下のようなことを決めましょう。

  • 場所
  • 名称
  • 取扱業務
  • 料金体系 など

これらは事務所の経営方針に大きくかかわるステップなので、時間をかけて慎重に取り組みましょう。

1.事務所の場所

事務所は、一般的にはテナントを借りて開設することが多いです。

事務所の場所を決める際は、以下のポイントに注目しましょう。

  • ターゲット層が集まっているか
  • 周辺に競合事務所はあるか
  • 交通の便が優れているか など

なお、開業資金に余裕がない場合は、軌道に乗るまで自宅を事務所代わりにするのも選択肢のひとつです。

その際、賃貸マンションやアパートなどに住んでいる場合は、管理会社や大家に事務所として利用してよいか相談しておきましょう。

2.事務所の名称

事務所名は、一般的には「自分の名前+法律事務所」とすることが多いです。

また、地域名、取扱業務、覚えてもらいやすい単語などを入れることもおすすめです。

なお、事務所名に関しては、日本弁護士連合会が規定を作成し、一定の制限を設けているので注意してくだい。

【参考】法律事務所等の名称等に関する規程|日本弁護士連合会

3.取扱業務

取扱業務をある程度明確にしておくことも重要です。

一般的には、これまでのキャリアや過去の解決実績を生かせる分野にすることが多いです。

しかし、今後の社会やニーズの変化を踏まえて、新たな分野に取り組むのも戦略のひとつといえます。

4.料金体系

料金体系も細かく決めておく必要があります。

料金に関しては、最低限、以下の項目を決めておくことをおすすめします。

  • 着手金や報酬金の有無・金額
  • 無料で対応する範囲
  • 途中解約時の清算方法 など

料金体系は、クライアントが特に気にする部分です。

競合の法律事務所や旧日本弁護士連合会報酬基準などを参考にしながら設定するとよいでしょう。

【参考】(旧)日本弁護士連合会報酬等基準

2.所属弁護士会に開業の連絡をする

独立開業の準備が整ったら、所属している弁護士会に対して法律事務所開設の届出を提出します。

弁護士が新たに法律事務所を設けるときは、所属する弁護士会に届け出なければならないことが法律で定められています(弁護士法第21条)。

必要な手続きは弁護士会ごとに異なるので、一度窓口に問い合わせてみましょう。

3.所轄の税務署に開業届を提出する

法律事務所を開設したら、管轄の税務署に開業届を提出する必要があります。

開業届は、e-Tax、郵送、持参のいずれかで提出することができます。

提出期限は、事業開始などの事実があった日から1ヵ月以内です。

1ヵ月を過ぎても罰則はありませんが、事務所を借りる際や銀行から融資を受ける際に、開業届の控えの提出を求められることがあるので、早めに済ませておきましょう。

【参考】A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁

弁護士が独立開業をする際の4つのポイント

ここでは、弁護士が独立開業する際のポイントを解説します。

1.資金面|自分で用意するか、銀行から借りるか

弁護士が独立開業する際は、開業資金を自分で用意するか、銀行などから借りる必要があります。

【資金調達別のメリット・デメリット】

メリットデメリット
自分で用意する✔貯金がある場合はすぐに開業できる

✔他人に迷惑をかける心配がない

✔資金を用意するのに時間がかかる

✔一時的に自分の財産が減ってしまう

銀行などから借りる✔まとまったお金を用意できる

✔経営に介入されることはない

✔利子を含めて返済する必要がある

✔審査に通らないと利用できない

✔担保や保証料などを求められる

勤務弁護士時代から開業資金を貯めている場合は、自己資金だけで開業できる可能性も高いでしょう。

しかし、事務所を借りたり、設備を整えたりすると100万円以上の初期費用がかかることもあるため、融資を受けるケースも決して珍しくありません

融資を受ける際は、以下のような各種支援制度を活用するのがおすすめです。

また、弁護士協同組合、各金融機関、自治体などが提供している事業ローンなども検討してみましょう。

2.事務所|自宅にするか、賃貸物件にするか

独立開業にあたっては、事務所を自宅にするか、賃貸物件にするかも重要になります。

【事務所別のメリット・デメリット】

メリットデメリット
自宅開業✔初期費用や設備費用を抑えられる

✔開業までの時間を短くできる

✔移動時間を少なくできる

✔プライバシーの観点から不安が残る

✔家族がいる場合は仕事に集中できにくい

✔賃貸住宅の場合はトラブルの原因になる

テナント開業✔広さ、内装、立地を自由に決められる

✔事務所にクライアントを招きやすい

✔契約金や敷金などが必要になる

✔条件に合う物件を探すのに時間がかかる

また、レンタルオフィスを契約し、打ち合わせは弁護士会館の会議室でおこなうなどの方法もあります。

なお、レンタルオフィスにする場合は、クライアントの秘密保持を確保できる必要があるので注意しましょう。

3.設備面|新品にするか、中古やリースにするか

設備を新品にするか、中古・リースにするかも、開業時の重要な選択となります。

法律事務所の開設には、主に以下のような設備が必要です。

  • コピー機・FAX
  • 電話
  • パソコン
  • シュレッダー
  • プリンタ
  • 執務机・いす
  • 収納庫
  • 本棚
  • 会議テーブル
  • 応接セット など

必要な設備は事務所によって異なりますが、費用を抑えるなら中古品やリースがおすすめです。

ただし、クライアントを事務所に招く場合は、信頼感を得るためにも内装の清潔さを重視すべきです。

顧客の目につくものは新品でそろえたり、中古品であれば実際に見てから購入したりするのがよいでしょう。

4.人材面|ひとりで運営するか、事務員を雇うか

開業後に事務所をひとりで運営するか、事務員を雇うかも決める必要があります。

ひとりで事務所を運営すれば、事務員に支払う人件費を抑えることができます。

しかし、事務員がいないと、クライアントとの相談時に電話が鳴り続けたり、外出時に事務所を尋ねてきた見込み顧客の対応ができなかったりするなど、さまざまな不都合が生じると考えられます。

最低でもひとりは事務員を雇うのが望ましいので、それを踏まえて資金や設備などを用意しておきましょう。

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独立開業をしてから安定的に集客をするコツ

独立開業後に売上を出すためには、まず集客に注力することを心掛けましょう。

ここでは、独立開業をしてから安定的に集客する4つのコツを紹介します。

1.法テラスと契約する

独立開業後は、まずは法テラスと契約するのがおすすめです。

国選弁護事件や民事扶助事件の依頼が入ってくる可能性があります。

高額な報酬は期待できませんが、開業直後の貴重な収入源となることが多いです。

紹介によって仕事を獲得できる仕組みを構築しておけば、より安定的に売上を出せるでしょう。

2.セミナーを開催する

法律セミナーを開催して集客するのもひとつの方法です。

たとえば、以下のような法律セミナーが考えられます。

  • 高齢者向けの遺言セミナー
  • 高齢者向けの成年後見セミナー
  • 経営者向けの経営法務セミナー
  • 人事担当者向けの労務センター
  • 不動産オーナー向けの債権回収セミナー など

セミナーを開催するメリットは、一度に複数の参加者にアプローチできたり、参加者との間に信頼関係を築けたりする点です。

セミナーを通じてそのまま依頼につながる場合や、将来的にクライアントになる場合もあるでしょう。

3.ホームページを作成する

安定的に集客するためには、法律事務所のホームページを作成しておくことも重要です。

一般的に弁護士を探す際はインターネット検索が多いため、Webによる集客は必要不可欠といえます。

ホームページの制作は、自力でおこなう方法と制作会社などに依頼する方法があり、それぞれの主なメリット・デメリットは以下のようになっています。

方法メリットデメリット
自作の場合✔納得いくまで作り込みができる

✔費用は最低限で済ませられる

✔時間や手間などがかかってしまう

✔プログラミングを学ぶ必要がある

✔集客するための対策も必要になる

依頼する場合✔制作から運用まで全て任せられる

✔デザインにこだわることができる

✔集客のアドバイスを受けられる

✔数十万円の費用がかかる

✔仕上がりに満足しない場合がある

ホームページを通じて集客をする際のポイントは、まずアクセス数を増やすことです。

SEO対策をおこなうのが一般的な戦略ですが、リスティング広告などで集客する方法も考えられます。

参考:SEO対策とは?具体的な施策手順や注意点を解説 – 徹底的にSEO対策するならランクエスト

より効率よく集客をしたい場合は、専門業者に依頼するのを検討することをおすすめします。

【関連記事】弁護士・法律事務所のホームページ制作を依頼するなら知っておきたい5つのポイント

4.ポータルサイトを活用する

Web集客に取り組む際は、弁護士ポータルサイトの活用も検討してみましょう。

ポータルサイトとは、特定の情報が集まったインターネットへの入口となるサイトのことで、中には複数の弁護士・法律事務所の情報が集約されたサービスサイトもあります。

ポータルサイトを活用するメリットには、以下のようなものが挙げられます。

    • 時間をかけずに集客を図ることができる
    • 定額制の場合が多く初期費用を抑えられる
    • 弁護士自身がSEO対策に取り組む必要がない
    • 専門チームがページ制作をサポートしてくれる など

弁護士ポータルサイトは複数の会社が運営していますが、できる限り大手ポータルサイトを選ぶのがおすすめです。

大手ポータルサイトであれば、常時多くのユーザーが閲覧しているため、掲載してから比較的すぐに問い合わせがくることもあります。

まずはいくつかの弁護士ポータルサイトに問い合わせをしてみることをおすすめします。

そのほか弁護士の集客術は以下の記事でまとめているので、あわせてチェックしてみてください。

【関連記事】弁護士の集客術6選|増え続ける弁護士の中で生き残るには?|法律相談ナビ

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弁護士の独立開業を支援している窓口3選

弁護士の独立開業を支援してくれる主な窓口には、以下の3つがあります。

  • 日本弁護士連合会・弁護士会
  • 商工会議所・商工会
  • 経営コンサルティング会社

それぞれ受けられるサポートに違いがあるので、適切に使い分けるようにしましょう。

1.日本弁護士連合会・弁護士会

日本弁護士連合会や弁護士会では、独立開業を希望する人に対して以下のような支援をおこなっています。

  • 開業について相談できるメーリングリストの開設
  • 独立開業セミナーや弁護士同士の交流会などの開催
  • 独立後にマンツーマンで助言するチューター制度の実施 など

日本弁護士連合会では、メーリングリストやチューター制度の運営などをおこなっています。

また、弁護士会によってはセミナーや交流会などで弁護士の独立開業を支援しています。

詳しくは日本弁護士連合会の公式Webサイトを確認したり、所属先の弁護士会に問い合わせたりしてみましょう

【参考】独立開業を目指す|日本弁護士連合会

2.商工会議所・商工会

商工会議所・商工会でも、弁護士の独立開業に関する支援をおこなっています。

具体的な支援内容は地域によって異なりますが、たとえば以下のようなものが挙げられます。

  • 創業支援セミナーや異業種交流会の開催
  • 創業に関する無料相談窓口の設置
  • 広報誌への掲載機械の提供 など

商工会議所・商工会には、開業に伴う手続き、事業計画の策定、資金調達の方法などについて幅広く相談できます。

また、地域の中小企業経営者や個人事業主が集まる場所でもあるので、人脈をいち早く形成したい方におすすめの相談先となっています。

3.経営コンサルティング会社

独立開業を目指す際は、経営コンサルティング会社に相談するのもよいでしょう。

経営コンサルタントとは、経営者の悩みを共有し、助言や戦略の策定などをおこなう専門家のことです。

中には弁護士の独立開業に特化しているコンサルティング会社もあり、テナント選び、資金調達、集客などについてよりよい提案をしてくれます。

無料相談に応じている場合もあるので、まずは独立開業について相談してみるのもおすすめです。

弁護士の独立開業に関するよくある質問

最後に、弁護士の独立開業に関するよくある質問に回答します。

Q.弁護士が独立開業するタイミングはいつがよいか?

弁護士が独立開業するタイミングは、基本的にいつでも問題ありません。

一般的には弁護士登録から5~10年後に独立開業するケースが多いので、ひとつの目安にしておくとよいでしょう。

ただし、ベストなタイミングは人によって異なるため、自分のスキルやキャリア設計などにあわせて適切に判断することをおすすめします。

Q.独立開業後に失敗するのはどのようなケースがあるか?

独立開業後の失敗例には、以下のようなものがあります。

  • 見込み客を確保しないまま開業してしまい、依頼がまったくこない
  • 能力・経験が足りていない中で強引に独立し、仕事を回せなくなる
  • 料金設定を低く設定し過ぎて、十分な報酬を得られない
  • 見栄を張った過剰な設備投資によって、資金不足に陥る など

独立開業をするにあたり、計画を立てていないと失敗するリスクが高まります。

十分に時間をかけて事業計画を立て、独立開業と事務所経営を進めていきましょう

Q.現在勤めている事務所はどのように辞めればよいか?

現在勤めている事務所を辞める際は、上司や代表者に退職の意思を伝えましょう。

退職するにあたり、業務の引き継ぎが発生するためできる限り早く伝えることをおすすめします。

今後も現在勤めている事務所と関係が続く可能性は高いため、円満退職を目指すようにしましょう。

さいごに|独立開業に向けて今から準備を始めよう!

弁護士が独立開業をする場合、早めに準備を始め、しっかりとした計画を立てたうえで行動することが大切です。

勢いに任せたまま無計画に行動してしまうと、開業後に依頼を獲得できなかったり、資金繰りに苦労したりする恐れがあります。

特に勤務弁護士として働いていて、経営者としての経験がない場合は行き詰まる可能性が高いです。

そのため、集客や経営戦略などに関する最低限の知識はあらかじめ身につけておくことをおすすめします。

また、独立開業に伴う課題を全て自力で解決しようとすると大きな負担になるので、各種相談窓口も有効に活用するのが望ましいでしょう。

【集客支援サービス ベンナビ】を詳しく見る≫

【参考】
ホームページ制作の費用相場ってナンボ? – OKデザイン株式会社
ホームページ制作費用の相場。新規サイト制作・サイトリニューアルごとに詳しく解説!(早見表付き)| EzONE(千葉県市川市)

この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。